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長持ちする塗料を実現した、塗料用フッ素樹脂

4半世紀以上も塗り替え不要

 4半世紀以上も塗り替え不要の塗料があります。フッ素樹脂塗料は25―40年もの間、風雨に耐えて塗り替える必要がありません。塗り替え周期は,アクリル樹脂塗料の4―7年、ポリウレタン樹脂塗料の10―12年、アクリル・シリコン樹脂塗料の10―15年などと比べて群を抜いています。フッ素樹脂の特徴である優れた耐候性は、フッ素樹脂のC‐F結合エネルギーの大きさが、それを破壊しようとする紫外線エネルギーよりも大きいことから得られるものです。
 塗料は、主原料の樹脂・顔料と各種の添加剤から構成されています。顔料は色彩を演出し、樹脂は耐久性などを確保するため、それぞれ重要な役割を果たしています。塗料が塗られた後、樹脂が硬化して塗膜を形成します。この膜の耐久性を向上させれば、塗り替え頻度を抑制することができるわけです。
 しかしその一方で、PTFEETFEPVdFといったフッ素樹脂は、難溶性の扱いにくい素材で、また結晶性を有するため不透明な素材でもあります。塗料は、樹脂以外にも、顔料や、各種の添加剤を溶剤に溶かして作られるので、溶剤への可溶化がフッ素樹脂を塗料原料として実用化する上でのハードルとなっていました。また顔料においてもその演出性を十分に発揮するには樹脂が透明であることが求められます。
 こうしたなか『ルミフロン』は、世界で初めての溶剤可溶型塗料用フッ素樹脂として、1982年に旭硝子によって商品化されました。その分子構造は、C‐F結合を有するフルオロエチレンとビニルエーテルとが交互に結合したフルオロエチレン/ビニルエーテルの交互共重合体です。PTFEやETFE、PVdFといったフッ素樹脂は不活性で安定、熱にも強い樹脂で、その特性が耐久性のもとになっていますが,単体では難溶性です。それを、ビニルエーテルとの交互共重合体とすることにより、ビニルエーテル部分に溶剤可溶性や顔料分散性に優れた性能を担わせ、全体としてフッ素樹脂を可溶化、塗料原料として利用可能なものにしました。ビニルエーテル部分は紫外線に強くありませんが、両脇を固めたフルオロエチレンによって紫外線から守られているため(i効果)、フッ素樹脂の特徴である優れた耐候性が損なわれることはありません。

 屋外で約25年間に浴びる量に相当する太陽光を人工的に照射する試験によっても、ルミフロンは塗り立ての80%以上の光沢を保持し、耐候性が実証されています。
 では、ルミフロンを使用した塗料の経済性はどうでしょうか。塗り替え頻度の低減によるコスト削減効果をみるために、50年の間にかかる費用を比べてみます。
 ルミフロンを使用した塗料で最初に塗装したときにかかる費用を100とした場合、50年間にかかる費用は、25―40年目の塗り替え費用を加えた200となります。一方、フタル酸系塗料では1回ごとの塗り替えにかかるコストは最も経済的ですが,それでも50年間で9回もの塗り替えが必要なため、トータルでのコスト指数は600近くにまでなります。アクリル・シリコン系塗料も初回はルミフロンを使用した塗料より低く抑えられているものの、4回の塗り替えを経た50年後には、トータルコストは450を超えてしまいます。また、塗り替えごとのコストがアクリル・シリコン系塗料ほどかからないウレタン系塗料の場合でも、4回の塗り替えによる最終的なコスト指数は400ほどにもなります。金額ベースでは、塗装する面積が広いほど差額は大きくなるので、大規模建築ほど、塗り替え寿命の長いフッ素樹脂塗料のコスト低減効果が発揮されることになります。

 また、塗り替え回数の大幅な低減は、塗り替え費用の削減と同時に、塗り替えごとに発生するゴミや溶剤の排出など、環境に与える負荷の低減にもつながります。
 ルミフロンベースのフッ素樹脂塗料は、高層ビルや煙突、アクアラインやレインボーブリッジをはじめとする橋梁などの大型建造物から、航空機、自動車など幅広く産業界で活用されています。商品化から20年あまりの間に、15万件以上の実績を築き上げており、合理化や環境保全の意識の高まりとともに、ますます評価が高まっています。
 (取材協力・旭硝子)


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