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「ケータイ時代」の立役者、リチウムイオン二次電池

自動車までもカバーする高性能

 リチウムイオン二次電池は、日本発の技術をもとに商品化されました。現在、世界全体で年間約10億個の製品が生産され、携帯電話やパソコンをはじめとしてさまざまなポータブル機器の電源として活躍しています。この電池がなければ、ポータブル機器の世界がこれほどの拡大をみせたかどうかわからないほどです。また、2008年ごろにはハイブリッド自動車の電池として採用される見通しで、エネルギー分野に大きな変革をもたらした電池といえます。
 電池は、ポータブル機器に不可欠のものですが、充電できない一次電池では不便さや資源、コストの面で問題がありました。そこで、充電可能な二次電池が開発され、普及しました。ただ、電解液に水を使うニッケル・カドミウム(ニカド)電池などでは、1.5ボルト以上の電圧が出せず、それ以上の電圧が必要な時には大型にしなければならないなど問題がありました。これを解決するのが、水を使わない非水系の有機電解液の採用だったのです。

 有機電解液を使う実用一次電池では、負極に金属リチウムを使います。リチウムは金属の中でもっとも軽く、もっともイオン化しやすいため、負極としてさらに負の電位を与え、正極と組み合わせたときに高い電圧を出す点で、高容量の電池には最適です。ただ、充放電を繰り返す二次電池では、万が一、破損した時に、金属リチウムが発火するなど安全性に問題があり、実用化の面で課題を抱えていました。
 旭化成工業(現旭化成)の研究者だった吉野彰氏は1980年ころ、高分子材料を研究する途上でポリアセチレンに注目しました。ポリアセチレンは、ノーベル賞受賞者の白川英樹博士が発見した導電性高分子で、溶接などで使われるアセチレンガスを重合して作られるプラスチックです。

 その電子を授受できる性質に着目し、金属リチウムを電極に使わない安全な二次電池の電極にポリアセチレンを使えないかと考えました。そして試験を繰り返し、電極として使えることを確認した結果、ポリアセチレンを負極、リチウムイオンを含むコバルト酸リチウム(LiCoO2)を正極にする二次電池の基本概念を確立したのです。これが、現在のリチウムイオン二次電池の基本となりました。
 しかし、負極のポリアセチレンは熱安定性に欠けること、比重が軽いため所定の起電力を得るのに体積がかさばることで、小型化しにくいという問題がありました。これを解決するために、吉野氏はポリアセチレンと同じく、共役二重結合を有し比重が2を超える炭素(カーボン)に着目しました。

 カーボンといっても、粒子状になったものから繊維状、中空状のものなどさまざまな形状のものがあります。そのうち、旭化成の研究所で作製した気相成長法炭素繊維(VGCF)というカーボンを試験したところ電極として抜群の性能を示すことを確認。カーボンを負極、LiCoO2を正極にした、現在のリチウムイオン二次電池の原型を完成しました。しかし、このVGCFは、現在ではカーボンナノチューブの一種ともいえるもので、作製が困難でした。電池向けに大量生産できないので、既存のカーボン製品の中から探索し、100種類以上の製品の中から使えるものをようやく探し出したそうです。
 これが、リチウムイオン二次電池開発のストーリーですが、その他にも、アルミ箔の上にカーボンを均一に塗って電極にする技術など、付随してさまざまな技術が開発されました。
 吉野氏はもともと高分子の研究者です。ポリアセチレンという新しい高分子材料の研究開発に取り組んだのが二次電池開発に結びつきました。世の中のニーズを絶えず見つづけていたことが、製品開発に取り組むきっかけとなったのですが、そのバックグラウンドには、福井謙一博士のフロンティア電子理論、白川博士の導電性樹脂・ポリアセチレンの発見という2つのノーベル化学賞受賞者による理論の裏付けがありました。
 リチウムイオン二次電池は、基礎化学と応用が結びついた、日本発の新しい技術の結晶ともいえるのです。
(取材協力・旭化成)


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