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植物由来プラスチックの雄、ポリ乳酸

化石資源節約とCO2増加抑制で、一石二鳥

 石油や石炭などの化石資源の使用が増えるにつれて、地球温暖化の原因の一つといわれる二酸化炭素(CO2)が増加しています。それを少しでも抑えようと、新エネルギーや新材料の開発・普及が世界的に進められています。
 材料の分野では現在、プラスチックのほとんどが石油を原料としています。わが国のプラスチック生産量は年間1400万トン以上。その生産や製品に加工するのに使うエネルギーの多くも石油や天然ガスなどの化石資源に頼っています。
 石油から作られるプラスチックの大部分は分解しにくく、土壌や水中でそのまま残ってしまうなど、環境問題の中でも廃プラスチック対策は重要な問題となっていました。


[出典(Nature Works LLC社より) E.T.H.Vink et al.,Cargill Dow(2003) Polymer Degrsadation and Stability]

 そこで、化石資源の保全と環境負荷軽減の双方に対応するプラスチックとして、バイオマスを原料とする植物由来プラスチックが注目されています。現在、いくつかの植物由来プラスチックが開発されていますが、世界でもっとも多く生産されているのが、トウモロコシなどのでん粉を原料にしてつくられるポリ乳酸(PLA)です。
 PLAは、重縮合系の脂肪族ポリエステル樹脂の一つです。1930年代から研究開発が進められましたが、実用性のある物性をもつものの工業的製法の難しさや安価な原料調達が困難だったことから、本格的な商業生産は2002年、米国カーギル・ダウ社(現ネーチャーワークス社)の年産能力14万トン設備の稼働により始まったといえます。
 PLAは、原料であるトウモロコシやイモ類のでん粉、さとうきびやさとう大根の糖を乳酸菌などの微生物の力により発酵させてL‐乳酸へと変換し、これを重合して作られます。

 この重合方法にはいくつかの方法が知られていますが、世界最大の生産能力を誇るネーチャーワークス社のそれはラクタイド法といわれるものです。乳酸からラクタイドを合成し、これを開環重合してポリ乳酸とする方法です。このほかにもいくつかの製造方法がありますが、このラクタイド法が一般的になっています。日本では、三井化学がネーチャーワークス社と事業提携して、このポリ乳酸を『レイシア』というブランド名で販売するとともに、物性の改良などを進めています。
 PLAは、代替の対象となる石油由来プラスチックなどと物性やコストの面で太刀打ちできるようなところにまでなりつつあります。PLAのもっている高い透明性や成形加工性などを生かすと同時に、植物度の考えを取り入れた材料開発が加速すると期待されています。また、普及が進めば、量産化により安価な供給も可能になります。
  植物由来プラスチックは、地球環境の保全と化石資源の節約に寄与する一つの解答といえます。広い意味で、資源循環型社会構築に貢献する新しい素材です。しかし、その普及には、企業や産業による低コスト化や製法の開発だけでなく、政府や自治体、そして私たち国民も一体となった取り組みが欠かせません。そうすることによって、植物由来プラスチックが石油由来のプラスチックを補完する日も、そう遠くない将来訪れることでしょう。


 すでに、多くの分野で植物由来プラスチックを使った製品が出回り始めています。鶏卵パック、野菜・果物容器、袋などやフィルム・シートなど、私たちがそれとは気付かない場合も多いようです。それに加え、パソコンや携帯電話のケースなど耐久性が求められる分野にまで採用されるようになってきました。また、2005年に名古屋で開催された「愛・地球博」では食器やごみ収集袋にこのポリ乳酸が使用されるなど、今後は包装容器の分野を中心に採用の拡大が期待されています。
(取材協力・三井化学)

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