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サプリメントで大人気、コエンザイムQ10

体のエネルギー生産を支える物質

 コエンザイムQ10は体内で生命に欠かせないエネルギーをつくるとき、重要な働きをする物質です。筋肉を動かすにも、心臓を始めとする臓器を健全に動かし続けるにも、大量のエネルギーを使います。

 動物は細胞内のミトコンドリアという小器官で糖や脂肪を燃やし(酸化し)、エネルギー通貨とも呼ばれるATP(アデノシン三リン酸)という分子をつくります。ATPは体内に貯めておけないため、ミトコンドリアの中ではたえずATPの合成が進みます。
 1957年に米国の研究者がウシ心筋ミトコンドリアから単離したコエンザイムQ10は、ATPをつくる過程で重要な仕事をする物質です。ATPをつくれなくなれば、体を動かすことはもとより、生きていくことさえできません。
 コエンザイムのコは「共同の」を、エンザイムは「酵素」を意味します。酵素は体内で物質を分解したり合成したりするときに働くタンパク質で、生命の維持や活動に欠かせません(別名:生体触媒)。つまりコエンザイムは、「酵素と一緒に働く物質」で、日本語では「補酵素」とも呼びます。その一種がコエンザイムQ10だというわけ。
 いままで動物体内に、コエンザイムQ10と同様の働きをするコエンザイムが10種類以上見つかっています。
 コエンザイムQ10には、酸化型のユビキノンと還元型のユビキノールがあり、体内では還元型の形をとります。なおQ10の「Q」はキノン(Quinone)、「10」は−(CH2−CH=C(CH3)−CH2)−の単位が10個つながった部分(側鎖)をもつ、という意味です。
 あらゆる生物の必須物質ですから、肝臓を主体とした体内あちこちの細胞で合成されます。どの細胞にも含まれ、成人男性体内の総量は約700ミリグラム(mg)です。ただし、体内のコエンザイムQ10量は20歳をピークに減少を始め、心臓の場合、80歳になると20歳のときに比べ半分程度に減ってしまいます。


 また、心臓病などを抱え、コレステロールを減らすスタチン系の薬を飲んでいる人も、体内のコエンザイムQ10量が減りがちだといわれます。コレステロールばかりかコエンザイムQ10の生合成も阻害されるせいだと、多くの研究で明らかになりました。
 偏食を続けたり、ストレスがたまったり、激しい運動などでも減ることがわかっています。現代日本のように高齢化が進み、生活習慣病やストレスがまん延し、食生活も乱れがちな昨今、年齢にあまり関係なく、コエンザイムQ10が不足している人は意外に多いと思われます。
 魚や肉類、ピーナツ、ブロッコリーなどの食品もコエンザイムQ10を含みますが、量は少ないため、食事からとれるのは4mg程度にすぎません。加齢で落ちる細胞内での合成能力を補い、健康を維持するため、日ごろ適量を摂取するのが望ましいのです。
 つまり、体にコエンザイムQ10を補給すれば、ATPの生産効率が上がり、元気をとり戻せるというわけ。日本では約30年前からうっ血性心不全の薬として使われ、海外(おもに米国)では栄養補助食品(サプリメント)として以前から販売されています。
 日本では2001年から食品として、2004年からは化粧品にも使えることとなり、コエンザイムQ10が一躍有名になりました。ようやく日本でも国民の元気を支える物質になったのです。オリンピックを目指すトップアスリートやプロ野球選手、プロゴルファー、競輪選手にも愛用者がいます。最近では、疲労に対処するために重要な役割を果たすのではないかとも言われています。
 コエンザイムQ10の量産化に成功したのは日本の企業です。日清製粉がナス科の植物(たばこの葉など)から大量合成に成功したあと、鐘淵化学工業(現カネカ)が酵母発酵法で生産し、旭化成も微生物から抽出する方法で生産しています。いま世界需要のほぼ全量を日本の企業がまかなっているのです。どのような原料を使おうと、コエンザイムQ10の化学構造に変わりはありません。もちろん、ビタミンなどと同じように、製造方法や、製造・品質管理能力によって、極微量ではありますが、純度や不純物の内容などが異なります。
 コエンザイムQ10には抗酸化作用もあり、ビタミンEと共同して、活性酸素が引き起こす脂質の酸化を防ぎます。また、免疫力の活性化にも役立つほか、血圧を正常化する力もあり、歯周病や動脈硬化の改善にも効果があるといわれます。さらに脳の神経細胞活性化にも役立つ可能性もあるため、いま増え続けているアルツハイマー病の治療にも切り札として期待が集まっています。


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