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誕生から半世紀、進化続ける瞬間接着剤

さまざまな分野で活躍するアロンアルフア

 シアノアクリレート系接着剤は、一液で貼り合わせた後、瞬時に接着できるその特長から瞬間接着剤とも呼ばれており、これまでにさまざまな分野で使用されてきました。シアノアクリレート系接着剤が1950年代後半に、アメリカのイーストマン・コダック社によって商品化されてから今日まで40年以上経過しているわけですが、その間にさまざまな要求性能や使用条件を満たすよう各種改良が加えられて今日に至っています。
 現在、さまざまなメーカーから瞬間接着剤が市販されていますが、わが国でその代名詞ともなっているのが『アロンアルフア』です。アロンアルフアは、東亞合成化学工業(現東亞合成)が、シアノアクリレートのもつ機能に着目し、課題克服に向け1960年から本格的な研究に着手した結果、それまでのメチルエステルではなく、エチルエステルがプラスチック、ゴムの接着性に優れた性能を持ち、接着機能の安定化など従来の問題点を解決できることを見いだし、工業用「アロンアルフア」として商品化しました。現在では、シアノアクリレート系瞬間接着剤の多くがこのエチル系のものです。
 一般消費者向けには、つり同好会からの「仕掛け、つり糸、えさの固定に使ってみたら便利このうえない」との声がきっかけでした。その後、貯蔵安定性、安全面や使い勝手を考えて、接着速度、粘度や容器包装の検討が進められ、一般工作用などとして手軽に使えるようになったのは1970年代に入ってからです。
 シアノアクリレートが、“瞬間”と形容されるほど素早い接着機能を発揮するのは、電子吸引性のシアノ基(―CN)とカルボ二ル基(>C=O)という2つの非常に強い活性基を有するためです。炭素―炭素二重結合(C=C)という、電子密度が非常に小さく、水のような塩基性の極めて弱い物質によってもアニオン重合を開始します。

 シアノアクリレートモノマーが、水を開始剤としてアニオン重合を開始して急速にポリマーへと変化して硬化、接着剤となるのです。その後の製品開発により、常識的に不可能と思われていた木材の一液接着(木材は酸性のうえ多孔質で難接着材料の一つである)を可能とするなど接着対象範囲も拡大しています。さらに、木材以外のいろいろな材料に対する接着速度が速められ、自動車産業などでの生産効率の向上に大きく貢献することになりました。
 また、指紋の検出にも使われています。指紋のついていると思われるモノを密閉した容器の中などに置き、シアノアクリレートの蒸気を発生させます。指紋がある場合には、指紋に残っている水分とシアノアクリレートが反応して、紋様が白く浮き出るのです。シアノアクリレートのもつ特性を活用したユニークな使用例です。
 瞬間接着剤は、接着力の強さも大きな特長です。例えば、1平方センチメートルに約5ミリグラムの瞬間接着剤を塗布すれば、300キログラム程度の力に耐えられる接着力があります。衝撃や熱には比較的弱いという性質がありましたが、近年は、これらの点の改良も進んでいます。
 メチル基やエチル基などのエステル置換基に、アルキル基以外の官能基を導入して、機能を改良しています。耐熱性や柔軟性、耐水性など諸特性が改良されるとともに、従来は瞬間接着剤では困難だった材料の接着も可能にしています。とはいっても、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)などオレフィン系樹脂には向いていません。PEやPPなどは、官能基を持たないため、極性分子との親和性が乏しく、塗装や接着がしにくいという性質があります。このため、接着しようとする面にプライマーを塗布することによって、接着表面を改質する方法が用いられています。プライマー成分が非極性分子と極性分子の橋渡しの役割を果たします。
(取材協力・東亞合成)

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